会長挨拶

ご挨拶

全国保健師教育機関協議会

会長 岸 恵美子

全国保健師教育機関協議会会長 岸 恵美子少子高齢化の進展とともに急速な人口減少が予測されている中、社会的格差や健康格差の広がりとそれに伴う複雑で深刻な健康問題、頻発する災害、国際的な感染症対策など、保健師には、多様で複雑な健康課題、それらに伴う不平等や生活の困難、地域の健康危機に対して公衆衛生看護の高度な実践能力が期待されています。
 新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおいて、保健師は、迅速かつ適確に対応して国民の生命を守るとともに、患者や家族の人権を尊重し、地域から孤立しないように支援することが求められました。保健師教育に関わる教員は、感染症法成立の歴史的経緯を深く認識し、感染症改正の動きなど、新型コロナウイルス感染症の国の方針や対策について常に注力し、次の世代を担う保健師である学生に教育するとともに、社会にも働きかけることが重要な責務であると考えます。
 保健師は、保健師助産師看護師法では「保健指導を業とする」とされていますが、保健師には対人支援のみならず、コミュニティへの支援、健康づくりのための政策作成などの専門的能力と、これらを支える視野の広さ、柔軟性、マネジメント、専門職としての自律と自覚など高い基礎力が基盤となります。時代と社会のニーズに対応できる保健師の養成は、国民の健康の保持増進に直接かかわってきます。
 全国保健師教育機関協議会は、保健師教育の質の向上を目指し、1980(昭和55)年に設立されました。2011(平成23)年には任意団体から一般社団法人となり、社会に対しても保健師教育に責任を持って活動を推進し、2020年度には40周年を迎えました。本協議会は、全国の保健師教育機関の発展と、保健師教育の充実を図り、もって公衆衛生の向上に寄与することを目的として活動を推進しています(定款第3条)。目的達成のため6つの常設委員会と7つの地区ブロック体制で以下の事業を行っています。

  1. 保健師教育機関の充実強化に関する事業
  2. 保健師教育機関の相互の連絡協議に関する事業
  3. 保健師教育機関の教職員の研修に関する事業
  4. 保健師教育の制度、教育課程等の調査研究に関する事業
  5. 保健師教育の評価・認定に関する事業
  6. 国内外の関連団体との協力と連携
  7. 公衆衛生の向上と国民の健康生活に貢献するための社会活動
  8. その他本法人の目的を達成するために必要な事業

2020(令和2)年度は、コロナ禍の中で保健所の積極的疫学調査への支援を実施するとともに、実習代替授業に関する情報交換とそのとりまとめの報告、体系的なキャリアラダー研修の実施、報告書として「保健師助産師看護師学校養成所指定規則改正後の看護師教育課程における地域看護論の教育内容」、「保健師教育における大学院カリキュラムモデル(全保教版 2020)」の作成、40 周年記念を迎えての記念誌の発刊や40周年記念事業としてのオンデマンドのリレートークの配信を行いました。また「新型コロナウイルス感染拡大に伴う保健師学校養成所における教育の質保証と卒業生の確保への対応について」や「新型コロナウイルス感染拡大に伴う採用試験への弾力的対応について」の要望書を提出し、感染症に関する罰則に対する「感染症法改正に関する声明」を発出しました。
 2021(令和3)年度も引き続き、保健師教育を担う教員の力量形成と上乗せ教育の課程の推進に向けた活動、教育内容と方法の充実を図ります。また臨時委員会として、健康危機管理に関する公衆衛生看護技術の明確化と視聴覚教材の開発を行う「健康危機管理対策委員会」、保健師教育の評価の意義やあり方を検討する「教育評価準備委員会」を新たに立ち上げました。
 現在、会員校は2021年6月現在226校となり、保健師教育課程の約8割を占めております。2021年4月現在、全国で保健師教育を大学院で行う教育課程は17課程、大学専攻科で行う教育課程は2課程となりました。保健師助産師看護師学校養成所指定規則改正により地域看護が教授されることで保健師教育の基盤が強化されますが、その積み上げとして公衆衛生看護学を基盤とする保健師教育が一層充実するよう、保健師教育の質向上のための活動を推進してまいります。会員校の皆様にはご支援・ご協力をいただきますようお願いいたします。