保健師は、保健師助産師看護師法総則第二条において、「厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者」とされる国家資格です。
私たちの社会は時代とともに移り変わります。現代では少子高齢化、国際化、情報化が進み、人びとが抱える健康問題も多様で複雑に変化しています。一例を挙げれば、生活習慣病、児童虐待、高齢者や障がい者の孤立、自殺対策を含むあらゆる年代のメンタルヘルス、新型インフルエンザ等の新興感染症、自然災害、健康格差などですが、保健師とは、これらの問題を解決するため、当事者である個人や家族を支援すると同時に、問題の原因や広がり、深刻さを見極めながら、地域社会全体に働きかけて支援するための知識や技術を有する公衆衛生(地域保健)の専門家です。
保健師の仕事 保健師の仕事は、人びとが抱える健康問題の背景にある社会の問題をも察知し、原因を探索して根本的な解決を図っていく、いわば「社会を看護する仕事」ともいえるでしょう。社会の基盤となる健康な地域をその地域住民と共に創っていく「地域づくり」を念頭に置きつつ、地域住民自らが主体的に行動し、地域住民自身や地域全体の健康状態を改善できるように支援する仕事や、地域に顕在している健康課題や潜在している健康課題を把握し、課題解決のための計画を立案し、実施、評価する仕事、さらには地域の健康課題の解決に必要な社会資源を開発する仕事などが含まれます。
保健師の仕事は、地域で生活する乳幼児から高齢者、健康な人から病気や障がいを抱える人等、あらゆる人びとと地域全体の健康のため、対象や地域に応じた方法で展開されます。具体的には、対象となる個人や家族への家庭訪問や健康相談、集団への健診・検診や健康教育、地区組織の育成等が挙げられますが、これらの活動は保健師自身が地域に出向き、地域に根ざして展開される活動(地区活動)です。保健師はそのような活動をとおして豊かなソーシャルキャピタル(住民や組織同士がつながり、地域に根ざした信頼やネットワークなどの社会関係)の醸成を図ることにも役割を担っています。